監修:
おいしい健康 管理栄養士
藤田医科大学病院 食養部 係長
管理栄養士/食物栄養学博士/米国栄養サポート臨床師
一丸 智美 先生
カルシウムの基本と食事の工夫
短腸症候群(SBS)の患者さんが意識して摂取したい栄養素のひとつにカルシウムがあり、骨粗鬆症や尿路結石の予防にも大切な役割があります。
カルシウムの摂取に効率のいい食べ物の代表例として牛乳や乳製品がありますが、乳糖不耐症で摂取を控えている方もいらっしゃるでしょう。今回は乳糖不耐症の場合でも参考になる、カルシウムを摂取する際のポイントをご紹介します。
カルシウムはどんな栄養素?
カルシウムの体の中での働きは、骨密度を維持して骨折リスクを減らす他に、神経細胞間の情報伝達や筋肉の働きをサポートし、心臓の機能や血圧調節にも役立っています。また、SBS患者さんの中で結腸が残存している場合は、体外にシュウ酸を排泄する役割も果たすため、尿路結石の予防にもなります。
一方で日本人はカルシウムの摂取量が少ないことが課題で、その原因が日本の環境と食生活にあると言われています。欧米と比べて、火山灰が多い土壌にミネラル分が少ない分、飲料水や農作物のカルシウム含有量が少ないこと、また乳製品を食べる量の少なさが理由としてあげられています。
また、カルシウムは体内で吸収されにくい栄養素でもあります。食品によって異なりますが、吸収率は平均して2〜3割くらいとも言われています(※1)。カルシウムは、含まれている食品や吸収率の特徴も踏まえながら、効率よく摂取することが大切です。
カルシウムを多く含んでいる食品は?(※2)
魚
骨ごと食べることができる煮干し、しらす干しなどの小魚やさば、いわし、さんまなどの缶詰は魚の中でもカルシウムを含んでいる量が多い特徴があります。
大豆製品
豆腐、豆乳にもカルシウムが含まれます。特に豆腐の場合、絹ごし豆腐より木綿豆腐の方が水分量が少なく栄養素が凝縮されているので、たんぱく質を始めカルシウムなどのミネラル類も多くなります。
野菜
野菜の中では小松菜、大根の葉、チンゲン菜といった緑黄色野菜もカルシウムが多めです。繊維が気になる場合は、包丁で細かく刻む、ブレンダーなどで粉砕すると繊維が短くなり、お腹への負担も少なくなります。
乳製品
乳製品では、牛乳のほかにも、牛乳から脂肪分を除去し乾燥させたスキムミルクがあります。スキムミルクは脂肪分をほとんど含まず、カルシウムやたんぱく質も補えます。
カルシウムを効率よく摂取するための工夫
吸収率を高めてくれる栄養素が含まれた食品と一緒に摂る他、生活習慣を工夫することで吸収率をよりアップすることができます。
栄養素と食品の工夫
ビタミンDを一緒に
ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きがあります。ビタミンDを含む食品は魚、卵などがありますが、種類はあまり多くないため、サプリメントなども上手に活用するとよいでしょう。
吸収を妨げる食品は食べ合わせを考える
インスタント食品、スナック菓子、加工食品にはリンや食塩が多く、カルシウムの吸収を妨げると言われています。
生活習慣での工夫
分散して食べる
一度に大量のカルシウムを摂取するよりも、1日を通して何度かに分けて摂取する方が、吸収率がよいとされています。
日光浴
ビタミンDは体の中でも作られる栄養素で、紫外線を浴びることで生成されることが知られています。夏場なら15分程度、冬場なら30分程度が目安と言われていますが、家の中で過ごすことが多い方や日焼け止めを塗って過ごすことが多い方は、不足しないように食事から多めに摂ることを意識しましょう。
SBSの患者さんは残存している小腸の部位や体質によって個人差が生じます。担当医師や管理栄養士と相談しながら、自分にあった食事方法をみつけていきましょう。
※2 文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より
※3 食べる量は症状にあわせて調整しましょう。
※4 乳糖で下痢が悪化する方は、控えた方がよいでしょう。
※5 参考値であり、商品により異なります。
<栄養価は文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年を参考>